墓じまい、そしてお墓の引越しになった理由【利府町の石屋しんせい】

石屋の米田です。

今回は墓じまいについてのお話です。

こちら読み進めていきますと、墓じまいを相談にきた方が墓じまいをして、その後、新しい場所にお墓の引越しを決意した理由が綴られています。

最後まで読んでいただけますと幸いです。

 

 

お参りをする人がいないとお墓は破壊されていく

先日、宮城県登米市にある旧登米高等尋常小学校「歴史資料館」を見学してきました。
今から約130年前、明治21年に建てられた明治の洋風建築を代表する建造物で、重要文化財に指定されています。

東日本大震災で破損した箇所も有ったようですが、今も130年前建築された状態で保存されています。

この様に、現存する歴史的に重要な建物、記念碑・公園・庭園・神社仏閣などは、国や地方自治体・法人で、お金をかけて保存されていくのでしょうが、古くても指定されていない建築物は、何時かはその使命を終え、壊され、廃棄される時が来ます。

『お墓』も例外ではありません。
京都東山、高野山、谷中墓地、青山墓地など、日本中に点在する歴史的に著名な人物のお墓以外は、お参りする人が来なくなると、数年後には、壊され廃棄されることになります。

家系が永遠に続き、繋がって行けば、家族の墓石は壊されず、未来永劫に『お墓参り』をしてもらえるのでしょうが、全てのお墓が、そう言う訳にはいかないのです。

 

 

墓じまいの相談例

少し前、行政書士のAさんからお電話を頂きました。

「お墓に関するご相談で、逢ってほしい人が居るのです。」との事。

「明日、お願いしたい。」と急なお話しでしたが、お彼岸の仕事も終わっていたので、

「いいですよ」と返事をさせて頂きました。

お約束の日に、仙台市南部のお客様宅を訪問。
私どもは基本的に、夫婦二人でお客様のお話をお伺いするようにしています。

それは男の見方・思考と、女性との感性の違いを考えて、お客様により良い対応をさせて頂くためです。

ご相談者は老齢のお父様と、その娘さん。
家族構成は老夫婦(お二人ともお元気)と娘さんが二人です。

関西に嫁いだ娘(妹)さんが、老いた御両親のお世話をするために三ケ月毎に、関西から仙台の実家に帰って来ています。

ご相談者の自宅の近所に有る共同墓地に代々のお墓も建っています。
(お父さんの両親のお骨が、収めてある)

『その代々のお墓を、今後どのようにしたらいいのか?』と言うのが、今回の主な相談の内容になります。

御相談者は、今あるお墓を
墓じまい(お墓を解体して処分する)して、お墓に収めてある先代夫婦のお骨を、新たに購入するつもりの永代供養塔(現在探している)に移し、お父さんご夫婦が亡くなった時も、その永代供養塔に入れてあげたい。

そのために、「良い永代供養塔を探していただきたい。」ということでした。

基本的な方向性を持っておられるようですが、その考え方で良いものなのか?がわからないようでした。

私としては、
「せっかくお墓が有るのだから、お父様とお母様がお亡くなりになり、そのお墓に納骨されるまではお墓を守って行かれればいいのではないのですか?」とお答えしました。(代々受け継がれたお墓があり、そしてお参りする人がいるため)

そして
「その後に、どの様にすればよいのかを考えれば良いのではないでしょうか」
とお話しさせて頂きました。

現在の宗旨宗派の事も有るので、不用意にはお骨を動かす事は出来ません。

関西まで「お骨」を持って行くと言えば現在お世話になっている菩提寺も、納得してくれるのでしょうが、「近隣の違うお寺にお骨を動かす」と言う事になると、お客さんと、菩提寺との関係が微妙におかしくなって、お互いに『いやな思い』をすることになるかもしれません。

他県から仙台に引っ越してこられた家庭で、親が亡くなると今住んでいる家の近所のお寺で、お葬儀をお願いすることがほとんどだと思います。

「出来たら、実家と同じ宗派が良いかな?」くらいの感覚で、葬儀社を通じて、お寺様に葬儀の依頼をします。

そうする事でお客様とお寺は、『菩提寺と檀家』の関係になるのですが、
檀家であるお客様にしてみれば、その地に永く、代々暮らし、何代もお世話になっているお寺ではないので、『檀家』と言う意識も浅く、『お世話になったお寺』と言う考え方も少ないのです。

ですので、いざ『離壇』(檀家から抜ける)となると、それなりの料金が発生する事も有るのですが、それがお客様には理解できない。

この部分を上手く解決していかないと、お寺ともめる場合が有るのです。

まず、あらゆる方向から考えて、「より良い方法を目指して。」と言う事で、連絡を取り合う事としその日のご相談は終わりました。

 

墓じまい、そしてお墓の引越しを決意

後日、関西の娘さんから、この様なメールを頂きました。

先日は急なお願いに関わらず仙台の自宅にお越しいただきありがとうございました。
お二人の誠意ある姿勢に大変感動し、信頼できる方だと確信致しました。

これから少しずつ墓じまい、そしてお墓の引越しを進めて行きたいと父と話しました。
どうぞ宜しくお願いします

と言うものです。

この娘さんは、心から先祖の供養がとても大切だと考えられています。

お墓を無くすことが、いたたまれないのです。

だからこそ墓じまいをした後、お墓を建てず永代供養するという選択肢を選ばなかったのです。

何時までも供養して頂ける場所を、真剣に探しています。

 

これからはこの様なご相談が増えて行くと思います。

『供養』に関わる仕事をする者として、真摯に誠実に取り組まして頂こうと、考えています。

家族構成や考えによってお墓をどうするのか?については向き合い方がそれぞれ違うのです。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

宮城・仙台の石材屋の有限会社しんせい代表取締役社長。 仙台発・大人の情報誌『りらく』にコラム「亡くなるまでの知恵とその後の家族のために」を連載しております。今年で連載10周年です。 石のことなら何でもご相談ください。